ゆる~く説明していきますので、気軽に読んでくださいね。
多肉ファンの間で大人気のエケベリア。
つい周囲の人も知っている前提で話しがちです。
そんな時、「エケベリアってなに?」って聞かれたことありませんか?
多肉の仲間といってはぐらかすことは簡単です。
ですが、せっかくの機会なので、語れる材料を持っておきたいところですね。
そこで、エケベリアの基本情報からちょっと物知りになれるプチ情報までをご紹介します。
エケベリアの基本情報
まずは、エケベリアについて簡単に説明します。
- 学 名:Echeveria
- 科・属:ベンケイソウ科のエケベリア属
- 原産地:メキシコや中南米
- 原 種:約200種類
- 交配種:1000種以上(集計不能)
多肉植物とは、葉、茎、根に水を蓄えられる植物のことです。
サボテンも多肉植物の一種で、「サボテン科」に分類されます。
ベンケイソウ科には、エケベリア属以外にクラッスラ属、カランコエ属やセダム属なども含まれ、ホームセンターや園芸店などに広く流通しています。
原種は、いまだに新種が発見されることがある一方で、絶滅しているものもあるようです。
原産地はメキシコや中南米ですが、どこにでも生えているわけではありません。
多くは標高1000m以上の高地の崖や岩のすき間など、他の植物が育ちにくい過酷な場所に自生しています。
交配種とは、異なる2種以上の親を受粉させて作ったものを指します。
古くから愛好家さんや業者さん等により交配が行われてきました。
現在でも日々増え続けており、数え切れないほどの新種が誕生しています。
エケひろばでは、できるだけ多くの原種と交配種を紹介していきます。
エケベリアの名前の由来
エケベリアという名前は、自生する地名や関連する植物からきたものだと思われがちですが、
実は人物の名前からきているんです。
その人物こそ、
アタナシオ・エチェベリア・イ・ゴドイ(Atanasio Echeverría y Godoy)
という、1771年生まれのメキシコ人の植物画家、博物学者です。
彼は、十代の頃から植物画家として遠征隊に参加し、アメリカ大陸スペイン領の動植物の目録作成に尽力したそうです。
当時はカメラがないため、画家が同行してスケッチを描く必要があり、かなり大変だったことが想像できます。
実際に、現地で赤痢にかかって中断したり、戦争の影響で逃げ帰ったりもあったとか。
そのせいもあってか、赤痢のため1803年に若くして亡くなりました。
エケベリアは、そんな彼の名誉を讃えて命名されたそうです。
他の動植物の目録も作成していたのに、なぜエケベリアに彼の名前がついたのでしょうか。
詳細は不明なものの、とりわけエケベリアに愛着があったから、と思いたいですね。
エチェベリア氏が最初にエケベリアの原種を描いたのは、1787年頃といわれています。
そして、1828年に オーギュスタン・ピラミュ・ドゥ・カンドール というスイスの植物学者の書籍によって、初めて「エケベリア属」として紹介されました。
その後、続々と新たな原種が採集・公表されていく中で、1870年代にはヨーロッパでエケベリアブームが起こり、交配が行われるようになりました。
それらの交配種はカリフォルニアへと広まっていったといわれています。
随分古くから広まっていたんですね。
では、日本ではいつごろから輸入されるようになったのか見てみましょう。
エケベリアに関する日本の歴史
日本における最初の輸入に関する文献は残っていないようですが、入手できた情報に基づき歴史をたどってみました。
~明治時代:海外からの輸入開始
エケベリアの日本の歴史は古く、国内屈指の定番種である 七福神 や 東雲 は、明治時代の頃に輸入されていたといわれています。
さすが、古くから栽培されているだけあって、日本原産であるかのように馴染んでいますね。
明治時代~1900年代半ばごろ
明治時代以降しばらく記録が確認できないものの、1900年代前半までに複数のエケベリアが輸入されています。
エケベリアには和名で漢字表記になっているものが複数ありますが、それらはかなり以前から輸入されていたものが多いです。
当時の人気はサボテンであり、エケベリアはしばらく注目されることなく時が流れていきます。
1900年代半ばごろ~1960年代:新たなエケベリアの輸入
この頃になると、輸入されたエケベリアの多くがカタカナ表記で流通するようになります。
これらのエケベリアから次世代の新種が生まれていくことになります。
1970~1980年代:根岸交配の誕生
愛好家の根岸利和氏によって、1970~80年代にかけて作られた「根岸交配」が、市場に流通するようになります。
沙羅姫牡丹、七福美尼、野ばらの精、大和美尼
といった人気種は根岸氏によって作られた交配種であり、現在でも市場に定着しています。
当時はあまり注目を集めなかったようですが、もしSNSがあったとしたら、爆発的な人気になっていたかもしれませんね。
その後、業者さんによる輸入や交配により徐々に種類は増えていくものの、サボテンやハオルシア人気には及ばず2000年代へと移っていきます。
2000年代:ブログや書籍での知名度向上
2000年代になると、ブログの影響によりエケベリアの存在が浸透するようになります。
エケベリア人気が上昇するにつれ、多肉の販売イベントでエケベリアを販売する業者さんが増えていきます。
2000年代後半には、根岸交配が再び脚光を浴びるようになり、様々な種類を市場で目にするようになりました。
また、エケべリアに関する書籍が海外で出版され、日本でも話題になりました。
- 『ECHEVERIA CULTIVARS』:栽培品種、交配種を扱った書籍(2005年出版)
- 『The genus Echeveria』:原種を扱った書籍(2008年出版)
2冊とも内容が充実しており、とても人気の書籍です。
『Echeveria Cultivars』には交配の方法が記載されているため、愛好家さんのなかで交配に取り組む人がでてきました。
2010年代:SNSによる人気沸騰と大交配時代の幕開け
2010年代の主な動きをまとめてみました。
2010年になると、従来東京の郊外で開催されていた国際多肉植物協会主催のビッグバザールが、定期的に都心部で開催されるようになります。
日本発の新しい交配種や、輸入した種から育てた原種が出回るようになりました。
愛好家さんが購入したエケベリアは、ブログを通じて全国に拡散されました。
都心のアクセスの良さから、年を追うごとに人が多くなっていきました。
韓国からのエケベリアの輸入が増加し、ネットオークションで見慣れない名前のエケベリアを目にする機会が増えました。
東京の販売イベントに参加できない全国の愛好家さんたちを含めて激戦となり、高値で落札されました。
韓国苗に関しては、一度で回った交配種が時間がたつと別の名前で出回ったり、同じ名前で顔違いが出回っているのではないか、といった疑問の声が聞かれます。
交配式が非公開で情報が少ないため、輸入販売業者さんや消費者側に目利き力が求められる状況が続いています。
2010年前半には、多肉栽培経験が浅い愛好家さんでも交配を始める人が増えてきました。
ブログで交配方法をオープンにする方もいたため、徐々に広がりを見せていきます。
2010年代半ば以降は、インスタグラムやツイッター等のSNSが力を発揮します。
若い世代も含めて幅広くエケべリア人気が拡散し、交配ブームが加速することになります。
YouTubeでもユニークな動画が掲載されるようになりました。
交配人気が高まるにつれ、新しい交配種の人気はもとより、チワワエンシスやヒアリナをはじめとした原種や普及種が、交配の親株として人気上昇。
品薄状態が続き、今までお手頃だった価格が急に高騰する現象もみられるようになります。
そして、2019年には人気業者さんからオリジナル交配種のブランド販売が開始されました。
2020年代:新たな時代へと…
2020年になると、コロナ禍によってエケベリア業界に更なる変化が起こります。
インスタグラムやYouTubeなどのSNSの活用が盛んになり、新たなファン層の増加とすごもり需要が発生します。
交配ブームにますます拍車がかかり、愛好家さんが続々とオリジナル交配種を販売するようになりました。
人気業者さんのオリジナル交配種のブランド販売も各地で行われるようになり、全国レベルでますますエケベリア市場は活気を帯びていきます。
交配種の人気が高まるなか、原種も負けてはいません。
コロラータの地方種やリンゼアナなど、いつの時代も人気のエケベリアは在庫切れや高値での販売が続いています。
そして、2022年になると、ついに日本初の原種のみを扱った書籍が発売されました。
『WILD ECHEVERIA』:原種を扱った国内の書籍(2022年出版)
一方、業者さんや生産者さんのハウスで盗難が目立つようになりました。
人気が上がるとリスクがつきものですが、このような被害が一刻も早くなくなって、販売者も消費者も安心して取引できるようになってほしいものです。
このように、SNSの普及に合わせて原種・交配種共に人気をあげていったエケベリア。
2020年代を通して人気がどうなっていくか、今後も目が離せませんね!
まとめ
いかがでしたでしょうか?
エケベリアに詳しくない人に語ると、マニアックすぎて引かれてしまうかもしれませんが、知識の引き出しには入れておきたいですね。
育てているだけでも楽しいですが、普段よく目にするエケベリアに長い歴史があったことを知ると、より愛着がわくかもしれません。
ここで紹介したエケベリアをお持ちでしたら、先輩エケとして大事にしてあげてくださいね!