今回は、定番のエケベリアである「大和錦」です。
広く流通しているため、エケベリアを知らない人でも見たことがあるかもしれません。
どっしり迫力のある横綱のような安定感を持つ魅力について紹介します。
基本情報
学 名 | Echeveria purpusorum(プルプソルム/パープソルム) 和名は「大和錦」 |
自生地 | メキシコのプエブラ州に分布 |
語 源 | ドイツ人の J.A.Purpus 氏に由来 1911年に Urbinia purpusii と命名されるも、他で使用されていたため名称変更 |
来 歴 | 1909年に採集され1911年の文献に掲載 日本でも古くから流通している |
タイプ | ディオニソス(’Dionysos’)と呼ばれる purpusorum の交配種 も大和錦として流通している |
タイプ別比較
大和錦は、purpusii(プルプシー)と命名されていたことがあります。
ラテン語の読み方からすると、プルプソルムと読むのが正確ですが、国内ではパープソルムと表記されることが多く、欧米でもそのように発音されるように見受けられるので、パープソルムも併記します。
大和錦は、様々なタイプが流通しています。
I.C.N.によると、purpusorum は細い葉で先端がとがっており、Dionysos(ディオニソス) は葉がふっくらしている傾向があるとのことです。花びらの長さも異なるようです。
ディオニソスと思われるものを含め、いくつか比較してます。
大和錦
葉がふっくらしたタイプです。
青大和
葉がふっくらしています。
青みが強いタイプにつけられた名前だと思いますが、ディオニソスのことを指すようです。
紅大和
赤みが強く、葉がふっくらしています。
大和錦レッドフォーム
紅大和と同じものかもしれません。
大和錦ホワイトフォーム
白みが強いタイプです。
大和錦
葉の先端がとがったタイプです。
大和錦
葉が細いタイプです。
その他、近年ではあまり見かけなくなりましたが、『大和の光』(大和姫ともいう)と呼ばれる斑入りのタイプもあります。
トップ画像の大和錦は、コレクションの中からなるべく細葉で先端がとがったものを選んでいます。
必ずしも原種であることを保証したものではありません。
販売情報
大和錦は広く流通しており、ホームセンターや園芸店などで入手可能ですが、ディオニソスであるケースが多いです。
細葉タイプの流通量は限定的ですが、販売イベントやオンラインショップ、ネットオークションなどで入手可能です。
魅力/特徴
大和錦の魅力は、横綱のようなどっしりとした風貌と渋めのスタイルでしょうか。
1つ置いてあるだけで、安定感と安心感を与えてくれるはずです。
大和錦の多くが交配種(ディオニソス)といわれています。
葉の形や色にさまざな違いがあり、コレクターの心をくすぐります。
こういった違いを見比べるのが楽しいと思えるようになると、マニア感が出てきますね。
花は、朱色で先端が黄色のかわいらしい形をしています。
育て方のコツ
大和錦は非常に丈夫なので、あまり過保護に育てる必要はありません。
よほどの日照不足でない限り徒長はしません。
梅雨明けなどに強い日差しを受けると葉焼けすることがありますので、ゆっくり慣らしてあげましょう。
また、ハダニが発生しないように、定期的に全身に水をかけてあげるとよいと思います。
交配種
大和錦は歴史のあるエケベリアだけに、古くから交配に活用されており、様々な代表種があります。
根岸交配
ケッセルソルム
ケッセルリンギアナ × 細葉大和錦
大和錦の渋みを打ち消すくらいのケッセルリンギアナの強い遺伝子を感じる交配種です。
清和王妃晃
細葉大和錦 × 王妃錦司晃
センセプルプ
センセメジオ × 細葉大和錦
ドンドル大和
ドンドルビン × 大和錦
大和の薔薇
大和錦 × ザラゴーサ sp. ノバ
大和の舞
大和錦 × カーリーロック
大和美尼
大和錦 × ミニマ
- 青葉の舞: 青葉大和錦 × カーリーロック
- 錦雲: 王妃錦司晃 × 大和雲
- 沙羅大和: サラゴーサノバ × 細葉大和錦
- 大静夜: 大和錦 × 静夜
- 紫大和: 紫れんげ × 大和錦
- 大和雛: 細葉大和錦 ×ヒアリアナ
- 大和弁天: 大和錦 × 岩弁天
- 養老大和: 養老(紅) × 細葉大和錦
その他交配種
アズタローズ(’Aztarose’)
アズタトレンシス × 紅大和錦
大和の雰囲気を残しつつ、葉のエッジにアズタトレンシスらしい赤いラインが出ています。
シャムロック(’Shamrock’)
大和錦の雰囲気を残しつつ、鋭く細かい葉で魅せています。
大和神(ダイワジン)
大和錦 × 七福神
横森 道二氏による作出です。
作出者による命名はダイワジンですが、ヤマトシンとしても流通しています。
大和蓮(ダイワレン)
大和錦 × 相府蓮
横森 道二氏による作出です。
アガボイデス感が強く、大和の特徴があまり感じられません。黄色い花が咲きますが、両親とも黄色い花ではないため、どちらかの親がプリドニス交配かもしれません。
作出者による命名はダイワレンですが、ヤマトレンとしても流通しています。
ディオニソス(Dionysos‘)
大和錦としても流通していますが、より葉がふっくらした交配種です。
パルバ(’Parva’)
大和錦 × プミラ(E.pumila)
ベンバディス(’Ben Badis’)
大和錦 × 静夜
大和桜
大和なでしこ
大和美尼とよく似た容姿をしているため、大和系とミニマ系との交配と思われます。
大和の宴
葉の質感からエレガンス系の雰囲気を感じます。
大和姫
大和系とミニマ系との交配とみられます。
大和錦の斑入りを大和姫といいますが、斑入りの流通量が少ないため、このタイプの方がメジャーになっています。
モノケロティス錦
モノケロティスは、大和錦と紅司の交配種と思われます。
斑入りは人気があります。
ヤンジン(’Yangjin’)
大和錦 × sp(おそらくBig Red)
1994に作出された韓国苗です。
- ベルエトワール(’Belle Etoile’): 大和錦×sp
- ベリル(’Beryl’): 大和錦 × ストリクチフローラ
- ファビオラ(’Fabiola’): 大和錦 × 静夜
- グローリー(’Glory’): 大和錦 × sp
- ヘラ(’Hera’): プミラ × アフターグロウ
- ピンコラ(’Pinkola’): 大和錦 × ラウイ
- プア(‘Pua’): 大和錦 × アガボイデス
- Punam: 大和錦 × プリドニス
- ‘Punita’: 大和錦 × ディフラクテンス
- セトルム(’Setorum’):セトーサ×大和錦
大和錦は遺伝子が強いイメージがありますが、センセプルプや大和神、大和の薔薇などをみると、あまり大和色がみられない交配種もあります。
大和錦の風貌を維持して、ザラゴーサのような強力な爪を持たせるには何と交配するのが良いか?
などを考えながら交配するのも楽しいですね!
以上、大和錦の紹介でした。
かわいらしいエケベリアもよいですが、渋めで安定感のある大和錦を置いて、落ち着いた雰囲気にしてみるのはいかがでしょうか?